最後の大仕事
- 石田勝己
- 4月12日
- 読了時間: 3分
実質、私にとっての最後になる大仕事「旅館立ち上げ」が始まりました。思い起こせば、6年前、京都プラザホテルズ会長との再会が私の一番大きな夢を叶える吉書であったと思います。
独立して始めたお宿応援隊は、最後に自分自身で旅館の運営ができればとの思いを秘め、あらゆる会社様へ旅館開業のお願い(投資)を続けたものの全く話には乗ってもらえない一年を経験しました。自身の会社も資金調達は、ままならず、窮地の淵にあった折、生活のためお世話になったある会社様で、後に当社の取締役となる友との出会いがありました。彼は、私との出会いを「何だか面白そうな匂いを感じた」と酒の肴にします。笑
鳴かず飛ばずの会社運営の中、京都プラザホテルズ会長との再会に「旅館をしませんか?」と切り出した私は、これが最後のチャンスと腹を括り、「上手く行かなかったら私が借金を抱えます!」と豪語したのを覚えています。当時名前も決まって無かった「花鳥風月」の立ち上げは、まあ、ハードルの連続で、次から次へと現れる課題に心折れそうでした。しかし、現れる課題の全てが考え方の方向性に起因する事に気づきました。問題の起因は自分以外の人が悪いという潜在意識です。自分は正しい、相手が悪いと双方が思えば問題は大きくなります。建設途中に青二才の私が先輩方に勇気を振り絞って発した言葉は、「お互い補い合えないのか!」でした。場が収まらない事を覚悟で発した言葉は、賢明なる先輩方のおかげで生かされました。
サービス業は、他業種より給与水準が低いと言われます。また、旅館は離職率が高い業種です。お客様を癒す素晴らしい業界なのに何故でしょうか。私はこう考えます。働く職場に求めるものが正しく理解されていないからだと。
仕事場とは、働く人にとって大きくふたつの目的があると考えます。ひとつは、生活の糧を得る場である事(お金を稼ぐ事)もうひとつは、自分自身を成長させる場である事。ふたつめの要素が旅館に勤める人たちに理解してほしい部分です。
例えば、人材不足だから人を増やす。その前に自分たちのスキルを上げましたか?業務の無駄を見直しましたか?デジタル化を食わず嫌いしてませんか?お客様に必要以上な過剰サービスをしていませんか?小さなコミュニティで自分たちの牙城を作っていませんか?人間関係という理由で簡単に離職を考えていませんか?
私は、何事も成長なくして向上は無いと思います。比較するのは他人や他の会社ではなく、昨日の自分。力があるなら自身で独立してチャレンジも良しですが、体裁の良い世間の風潮でスキルアップの転職!などごく僅か。私の経験では業界転職者の大多数が待遇向上を図れずにいます。
多数の旅館ホテルで人事を預かっている立場から、ひとつの職場で、じっくり腰を据えて働く意味が自らの成長の源泉であることを最後のお仕事で伝えられればと思います。
花鳥風月の立ち上げが決まった時に自分への記念に購入した鞄を今回のお仕事で使うよう再度ひっぱり出しました。傷だらけですが、思い出のいっぱい詰まった鞄です。再帰できないかと思った自身のコロナ罹患から復帰後、最初の仕事は花鳥風月スタッフの採用面接でした。その時もこの鞄が横に居ました。見るにつけ、今も花鳥風月で頑張っているスタッフたちに感謝です。
Comments